うっ滞について考えてみた
うさぎさんの代表的な病気にうっ滞・毛球症があります。
因みにうっ滞や毛球症は病名では無く、症状を表す言葉です。
うっ滞と毛球症とは
うっ滞
うっ滞とは、消化器の途中で内容物やガスが動かなくなってしまう状態の総称です。
これだけでは病態の範囲が非常に広すぎるので人間でいう重症の便秘や腸閉塞(イレウス)の様なものとして考えてみました。
軽い場合は気づかないうちに改善していることもあると思われます。
毛球症
消化器の途中で毛玉が固まってしまう状態の総称です。うさぎさんは猫と違い毛玉を吐き出すことができないため便として排出するしかないのです。
ここで違和感があります。うっ滞と何が違うのでしょうか?
たまたま、うっ滞で詰まっていたのが毛玉だったということでこのような名称になった、もしくはうっ滞の結果、体毛を排出できずに固まっていたという状態をどう判断するのでしょう?
ただし、過剰な体毛の摂取による毛玉の塊が原因である場合を毛球症という指すのは違和感がないですね。
過剰な体毛の摂取?
過剰な体毛の摂取をするケースを考えてみました。
女の子であれば巣作りの際に自分の体毛を抜いて巣に置きます。その際に一部の体毛を飲み込んでしまうことがああるでしょう。
その他にもうさぎさんはストレスで体毛を過剰に抜いてしまうことがあります。その際に飲み込んでしまうこともあるでしょう。
うっ滞の原因は?
うっ滞を腸閉塞(イレウス)として考えてみましょう。

実はイレウスには種類がたくさんあります。
その中で機能性イレウスに絞って考えています。
イレウスになるとガスだまりができることがありますのでうっ滞の症状と違和感はありません。
機能性イレウス
蠕動運動が十分に働かない状態です。麻痺性・痙攣性があります。完全に経路が塞がるのではなく十分に送り出すことができない状態となりますのでマッサージや薬剤などで改善することがあります。
機械性イレウス
手術後の癒着や拡大した腫瘍によって経路が塞がった単純性。腸管自体がねじれたり重なったり絞扼したりして塞がる複雑性があります。血流を阻害して壊死したり穴が開いたりすることがあるため緊急手術になる事が多いのが特徴です。また、明らかに機械性イレウスの状況である場合は基本的に手術以外では改善しません。
消化器蠕動運動の抑制
蠕動運動とは消化器内の内容物を撹拌したり奥へ送り出したりする胃や腸の筋肉の動作の事です。
この場合の筋肉は自律神経に支配されており意識下で動かすことができない筋肉です。筋肉の種類は違いますが心臓の様に自分で動かしたり止めたりすることができない筋肉の部類となります。
つまり蠕動運動が過度に抑制されると内容物が停滞して硬くなり、より動かなくなり、うっ滞の原因となります。
消化器蠕動運動抑制の原因
うっ滞を予防するためには蠕動運動の抑制効果を抑制(蠕動運動の促進)する必要があることがわかります。
では具体的に蠕動運動抑制の原因とはどのようなことがあげられるでしょうか?
自律神経の調節
自室神経は皆さん聞いたことがあると思います。自律神経は更に交感神経と副交感神経に分類されます。
交感神経は運動や興奮している際に優位に働くものです。反対に副交感神経はリラックスしている際に優位に働くものです。
性質上、交感神経は色々な働きを促進し、副交感神経は逆に抑制する効果があります。簡単な表にしてみました。
拍動 | 血圧 | 消化 | 排尿 | 呼吸 | |
交感神経 | 促進 | 上昇 | 抑制 | 抑制 | 促進 |
副交感神経 | 抑制 | 低下 | 促進 | 促進 | 抑制 |
副交感神経を優位にすることで消化や排尿を促進することがわかりますね。因みに消化を促進するとは消化酵素の分泌や蠕動運動の促進にあたりますよ。
逆に交感神経が長時間優位になると消化が抑制されるため蠕動運動が抑制されてうっ滞の原因となる事になります。

抑制や促進とありますが、直接作用しているわけではありません。
自律神経の作用で特定のホルモンが分泌されるなどした結果なのです。
うっ滞にならないためには?
第一のうっ滞対策はまず蠕動運動を妨げないことです。そして蠕動運動を活発にするには副交感神経を優位にする必要があることもわかっています。
では具体的な対策はどのようなものがあるのでしょうか。
副交感神経を優位にするには?
ストレスや緊張を抑えてリラックスすることで副交感神経を優位にすることができます。
うさぎさんにとって安心できる環境を維持して、うさぎさんが嫌がらない程度に撫でてあげましょう。副交感神経が優位な時間をしっかりと維持してあげることができます。
慣れない環境や騒音・嫌なことをされるなどの状況に長時間晒されると常に交感神経が優位となり、蠕動運動は抑制されてしまいます。長期間交感神経が優位な状態が継続すると副交感神経との切り替えがうまくいかなくなってしまう病気になる可能性があります。
蠕動運動を促進するためには
副交感神経を優位にすることで蠕動運動を抑制しない対策は解説しました。
では他に蠕動運動を促進するにはどのようなことがあげられるのでしょうか?
チモシー(食物繊維)をメインに与えます
食物繊維は腸管を刺激するため、蠕動運動・便通を促進します。
ペレットやおやつにはデンプンなどが多く含まれているものがあります。人間にとっては便通改善に良いと言われますが、うさぎさんの場合は食物繊維の分解効率が低下して、かえってうっ滞の原因となります。ペレットやおやつは最低限度にして、なるべく租繊維が多く含まれているものを選択しましょう。
また、デンプンやタンパク質の摂取量が増加すると腸内フローラが崩れて危険な細菌が増加して別の病気になることもあります。
よく噛む・飲み込む
胃や腸の活動を刺激するためにはよく噛むこと、そして飲み込んで食道を刺激することです。
うさぎさんなどの草食動物は起きている間は常に食事の時間です。低カロリー低たんぱくのチモシーを常に食べ続けることで蠕動運動を刺激し続けるのがうさぎさんにとって正常な状態なのです。
ペレットやおやつを食べ続けた場合は過剰なカロリーと栄養素によってかえって肥満や病気になります。更にペレットやおやつを食べ過ぎることでチモシーを食べなくなるようになるとうっ滞の原因となります。
適度な運動
交感神経は過度に抑制すればよいわけではありません。しっかりと運動してしっかり休むことが必要です。交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズに行えるようにすることが必要となります。
因みにうさぎさんは連続して運動できる時間は1分程度です。少し遊んだらすぐに休みます。
水分を適度に摂取する
うさぎさんの主食は乾燥チモシーです。水分を適宜摂取することで蠕動運動の際に内容物の動きをスムーズにすることができます。蠕動運動自体を促進するものではありませんが蠕動運動をより効率的にすることができます。
喜んでもらう
うさぎさんは好きな人に撫でてもらうのが好きな子が多いです。できるだけうさぎさんが喜ぶことには応えてあげましょう。幸福感を感じることで副交感神経が優位になりやすいくなります。
ただし、喜ぶからと言って好きなおやつを過剰に与えるのは逆効果ですので控えましょう。
適温を保つ
寒いと消化器の活動は抑制されます。血管が収縮して血流が悪くなります。血流が悪くなると重要な臓器に優先的に血液が偏ります。
暑いと熱中症になり、蠕動運動どころではなくショック状態になります。うさぎさんは汗をかくことができないために熱中症になりやすいのが特徴です。
背中なども撫でましょう
背中やお腹をマッサージすると蠕動運動を刺激することができます。
強く押す必要はありません。優しく撫でるだけでも効果があります。軽いうっ滞であれば知らないうちに改善している場合もあります。
また、普段からお腹を触れておくことで普段のお腹の状態がわかります。異常があった時にいつもと違うかどうかわからないと対処に困りますよね。
うっ滞の危険性とは?
ではうっ滞がなぜ危険なのでしょうか?順を追って考えてみましょう。
腸閉塞(イレウス)は人間にとっても危険なものです。ただし人間の場合は自身で訴えることができることや検査により腸閉塞の分類もしやすいのですが、うさぎさんは基本的に不調を隠す習性があるため手遅れになりやすく検査も難しい特徴があります。
最初は便秘の様なもの
何らかの原因で蠕動運動がうまく作用せず内容物が滞る状態となります。皆さんの便秘の際の症状を考えてみましょう。
軽い場合は腹部が張る、ガスがたまる、などから始まります。
ひどくなると、腹部の張が強くなる、腹痛、頭痛、食欲不振、吐き気、冷や汗など通常の生活に支障がでることもあります。

軽い場合でわかれば対処も可能でしょう。
しかしこの段階では気づくのは難しいという現実があります。
うさぎさんが訴えてくれればよいんですが・・・。
この段階での症状は?
はっきりとはわかりませんが、便秘の症状となれば・・・
表に現れる状態はう●ちが少ない、小さいものしか出ない。食欲が低下するなどでしょう。
しかし、うさぎさんを飼ううえでこのような症状はたまに見られると思います。このような状態が診られた時、こまめに対処しておく方が良いと思われます。
この段階で気づいたら?
チモシーは嗜好性が低いために食欲がない時には食べなくなる傾向が強いです。
蠕動運動を促進するためには、まず少しでも食べてもらう必要があります。ここで検討するのがおやつ的に与えることができる牧草です。もしくは添加物が少なく租繊維含有率が高いペレットなどでもよいでしょう。
つまりはイタリアンライグラス・アルファルファ・オーツヘイなど、嗜好性が高いものを与えます。嗜好性が高いものはその成分上、過剰に摂取するのはうさぎさんの体質に合いませんのでおやつ程度に控える必要があります。
普段からうさぎさんが好む牧草などを選定しておくと色々なメリットがあります。
色々なメリットとは?
一つは前項の様に食欲不振の際にも食べてもらいやすいということが挙げられます。
もう一つは、その大好物すら食べないということはそれだけうさぎさんにとって辛い状況にあるというバロメータになる事です。
悪循環
うさぎさんは腹痛や食欲不振などを原因に食べられなくなります。
食べなくなることで蠕動運動は更に抑制されて比較的簡単に重症化してしまいます。
消化器の血流を阻害
硬くなった内容物が腸壁を圧迫し血流を阻害します。更に進行すると腫れや炎症を引き起こしてしまいます。
炎症を伴うことで炎症性物質を生成して全身に悪影響を及ぼします。血流阻害と合わせて体温低下や血圧低下などの症状のため、体力を非常に奪われぐったりします。
ショック
ショックとは意識消失や血圧低下、低血糖など症状を含めた危険な状態を指します。アレルギーや失血、炎症性など色々な種類のショックが存在します。
ショックに至る原因は様々なので割愛しますが、うさぎさんの死に至るまでの時間が短いことを考えるとショックに弱い、もしくはショックに至るまでが速いことが考えられます。
多くのうさぎさんはこの段階で命を落としている可能性が高いのではないでしょうか。
壊死・穿孔
血流を阻害された結果、組織が壊死することもあります。壊死すると組織が破壊され、その影響が全身に回ります、人間で言えばこの段階でショックに至るケースが多いです。
また、壊死した組織が完全に破壊されて穴が開く(穿孔)が起こると腹膜内に便が排出されて腹膜炎を発症します。人間では緊急手術~抗生物質投与、血液吸着療法などが必要となりますがうさぎさんでは既に手の施しようがない状態と言えると思います。
理由は複数ありますが時間的猶予が無いこと、すでにショック状態のため血圧がかなり低下していること、手術自体に耐えられない状態である事、すでに全身に回った炎症性物質に対処することが難しいことと言ったところでしょうか。
通常、うさぎさんの死後に解剖をすることはあまりないケースですのでここまで進展しているか確認していることはないと思います。
うっ滞になったら
家でできることは限られています。素直に受診しましょう。
まとめ
色々まと記載しましたが、うさぎさんは病院にいるのではなくお家でお世話しています。なので普段できることこそが最大の対策なのです。
まとめると
うさぎさんにリラックスしてもらう環境を整える。
うさぎさんにチモシーを食べ続けてもらう。
うさぎさんが求めるだけ撫でてあげる。
できるだけ遊ばせてあげる。
ペレット・おやつは最低限にする。
おかしいと思ったら受診しましょう。
実際、難しく考える必要もないですよね💦